自然と健康
頭の“疲労”を洗い流すへッドスパ
頭部のデトックスと髪質や脳のリフレッシュを実感
現代人に必要なのは肉体よりも脳の休息
体よりも頭を使うことのほうがはるかに多くなっている現代人。養老孟司さんの「バカの壁」にも、「現代社会は『情報化社会』だと言われます。これは言い換えれば意識中心社会、脳化社会ということ」と書かれています。
頭を使うには、他の器官よりもはるかに多くのエネルギーや血液が必要とされます。脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、なんと血液中にあるプドウ糖の約50%が脳によって消費されているといわれています。
脳が疲れを感じると、集中力や注意力、意欲などが低下することがわかっています。目覚ましが鳴ってもなかなか起きられない、起きても体がだるいというようなときは、疲れが残っている状態なのです。
このような疲れを自覚している人は多く、アロママッサージやハンドケア、フットケアなどが人気を集めていますが、最近はへッドマッサージをメニューに取り入れる美容院も増えてきました。
なかでも、「メディカルhairsalon Aroma」(東京・中央区)は、独自のへッドスパをメインに行っているサロンです。美容師で工学士でもある社長の斎藤慶之さんは、30年以上も前から東北地方でアロマセラピーを取り入れた美容院を経営していたそうで、その経験と実績をもとに昨年、銀座に拠点を移したばかり。
店長は薬剤師の資格も持つ息子さんの潤さんが務めています。完全予約制でエッセンシャルオイルやバッチのフラワー・レメディなどを利用したへッドスパを受けることができ、男性客の利用もあるそう。
いったいどんなものなのか、さっそく体験してみることにしました。
やさしい香りと適度な刺激で頭も首筋もスッキリ!
「オイルは約80種類のなかから選びます。基本はローズマリーやラべンダーなど3~4種類。妊娠中だとか、体調不良があるような場合はブレンドを変えたり、フラワーレメディを加えることもあります」(店長)。
ブレンドが決まったらシャンプー台へ。洗髪はゴシゴシと指先に力を入れて細かく動かす洗い方で、すでにマッサージをされているかのよう。とても心地がよく、地肌の汚れもしっかり落ちそうな感じです。
シャンプーの後は清涼感のある香りのローションをリンス代わりに髪に染み込ませ、洗い流します。そしていよいよヘッドスパ。頭部専用の浴槽に仰向けに寝かされると、後頭部にはじんわりと温かいお湯(40℃弱)の刺激が。
まるで湯船に頭をつけているかのような温かさで、これだけでも十分に気持ちよく感じます。このお湯にはさきほど選んでもらったアロマオイルが入っていて、やさしく爽やかな香りに包まれながら、マッサージが始まります。
額の上にも香りたつ温水シャワーがかけられ、やさしい刺激。そして頭部全体と首の付け根を、指先や手のひらに力を入れてマッサージ。頭を強くつかんで 動かされているような感じです。
耳の穴の近くはツボ指圧にも似たやり方で、かなりグイッグイッと押されましたが、痛みを感じることはありませんでした。「この技法は、インドのアーユルヴェーダや東洋医学の針治療、アメリカの頭蓋仙骨療法などの理論を参考にした独自のもので、サロンで少しずつ実践し、その結果をもとに確立したものです」(店長)。
マッサージ終了後は20~30分間、アロマの温水シャワーを頭部に当てたまま椅子の上に横たわってリラックス。「ほとんどの方はぐっすりとお休みになられます」と、店長。
筆者は前日にまとめた書類の内容や、週末に出なければならないマンションの理事会のことなどが頭の中をグルグル巡っていたのですが、時間がたつにつれ、だんだん思考力が鈍って霞がかかった状態に…。
どこかで店のスタッフの方と取材陣の話し声が聞こえるのですが、内容まではわからないという状態になっていきました。そのままとろとろと時間が過ぎてアラームが鳴り、起き上がってブローをしてもらったら終了。ここまででほぼ1時間のメニューでした。
終わった直後は頭部が消えてなくなってしまったような、不思議な感覚に包まれ、しばらくは会話をするのも困難なほど忘我の境地に至っていました。
「ひどくボーッとするでしょう?頭を使って一生懸命考えようとしている人ほど、そういう状態になるんですよ。精神的にストレスが溜まっている人の場合は、終了後に目のまわりがスッキリして、表情がやわらかくなることが多いです。ボクもたまに他のスタッフにやってもらっていますが、ごちゃごちゃしていた考えがまとまりやすくなります」(店長)。
筆者は特に頭が疲れているという自覚はなかったのですが、ここ数日の間、起きている時間のほとんどをパソコンに向かうか本を読むかのどちらかで過ごしていました。
それが、へッドスパを受けて休んでいる間に開放感でいっぱいになり、海外旅行へ出かけたときのように日常の雑多なことを何もかも忘れることができ、たった小一時間でリフレッシュできたと感じました。
セラピーを受けて実際にどの程度リラックスできたかは、指先に付けたパッドで心拍数などを計測し、パソコンの画面で見ることができます。取材開始時は1分間に90以上あった心拍数が下がり、緊張とリラックスの状態を示すグラフも、浅い睡眠に入ったと思われる頃にはほぼ平らになっていました。
睡眠が深まり、代謝を促進。毒物は体外へ
ふだん、筆者は6時間という中途半端な睡眠時間が最もつらく感じるのですが(眠る時間がないときは5時間以下のほうが日中に眠くなりにくい)、それが自然に目が覚めたうえに「もっと寝たい」という感覚もなく、朝からフル回転で活動できたのです。
老化を遅らせるための成長ホルモンは寝ている間に分泌されるといいますが、レム睡眠(浅い眠り)と、ノンレム睡眠(深い眠り)のリズムが乱れていたり、ノンレム睡眠が浅くなっていると、成長ホルモンの分泌が低下して肌荒れや老化を促進するといわれています。
ですから、「眠りの質がよくなると頭がスッキリするだけでなく、全身の老化予防にもなるはず」(店長)とのことです。頭皮の血液循環がよくなることで新陳代謝が活発になり、抜け毛や顔のたるみの予防になるなど、ヘッドマッサージにはリラクゼーション以外にもさまざまな効果があるといわれています。
マッサージにエッセンシャルオイルを利用する場合は、鼻から入った花の香りが脳に刺激を与え、気分がよくなるほか、オイルの持つ性質によって頭皮の健康が保たれ、脱毛しにくくなるなども期待できます。
さらに、使用する水などにも徹底的にこだわる「メディカルhairsalon Aroma」のへッドスパでは、毒素や老廃物を排出するデトックス効果も期待できます。
デトックスとは、体に入ってしまった毒素や老廃物をどんどん排出しようという考え方に基づいた健康法です。私たちがどんなに体に悪いものを避けようとしても、避けきれないのが現状ですから、このような時代に「体に悪いものは避けましょう」と言ったところで、現実的ではありません。
それよりもに入った悪いものをどんどん出すというデトックスが支持されるようになってきたのです。実際にお客さんがへッドスパをした後の廃液を調べたところ、お客さんによってはビスフェノールA(環境ホルモンの一種)が排泄されているケースを何度か確認しているといいます。
また、自己採決した血液を顕微鏡で観察してみると「血液中に細かく震えながら動き回る米粒状のものが見られることがあり、この物体がセラピー後の排液中にも見られることから、血液中の不要な物質が頭部から排泄されるのではないか」とのことです。
妊娠中に環境ホルモンが体内に入ると胎児に影響を与えるといわれていますが、妊娠中に3回ほどへッドスパを受けた妊婦さんは、出産した病院で「羊水も胎盤もとてもきれいだった」と言われたそうです。
こうしたこと以外にも、高齢で認知症が発症したのではないかと心配していた女性がとても元気になったり、「妊娠中にセラピーを受けたせいか子どもがとても健康」だとか、体調不良が改善したなど、感謝の手紙が多く寄せられています。
筆者がヘッドスパを受けた後の髪はアロマの芳香が漂って、ふんわりと軽くなり、首筋のつっぱり感も消えて頭全体が軽くなりました。
朝の目覚めがいまひとつという人など、一度受けてみるのもいいかもしれません。仕事帰りや外出のついでなどに受けられる手軽さも魅力の一つといえそうです。
※【バッチのフラワー・レメディー】…植物のエネルギーを転写させた水。イギリスの医学博士、エドワード・バッチが完成させたもので、本国では街の至るところで入手できる。日本でもテレビで紹介され、大人気。
※【頭蓋仙骨療法(クレニオセイクラル・ワーク)】…オステオパシー医であったウイリアム・サザーランド博士の研究をもとに行われるようになった代替療法の一種。脳脊髄液の循環や、頭蓋骨の可動性などと身体の関係に注目したセラピー。