認知症の治療と漢方薬アロマタッチの可能性

認知症を根本的に治療する薬はないといわれます。しかし、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症症状の進行を遅らせることを目的とした薬はあります。
認知症を治療する薬「アリセプト(ドネペジル)」
アリセプトは、アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症における認知症症状の進行を抑制します。ただし、症状の「進行を抑える薬」であり、認知症そのものを治す薬ではないことに注意しなければいけません。では、アリセプトは、どのような作用によって症状の進行を抑えるのでしょうか?脳内では、たくさんの神経細胞がネットワークで繋がっていて、膨大な情報交換が行われています。その情報交換の場はシナプスと呼ばれ、シナプスでは神経伝達物質を介して情報交換が行われています。アセチルコリンは神経伝達物質のひとつで、様々な役割を担う大切な物質です。シナプスから放出されたアセチルコリンは、情報を伝達した後に分解酵素「アセチルコリンエステラーゼ」によって速やかに分解され、再び元の神経細胞に取り込まれます。アルツハイマー型認知症の脳ではアセチルコリンの減少がみられるため、情報伝達後にアセチルコリンの分解が抑制されれば脳内におけるアセチルコリン濃度は高まると考えられます。アリセプトは、分解酵素「アセチルコリンエステラーゼ」を阻害することによって認知症症状の進行を抑制する薬です。
認知症を治療する薬「レミニール(ガランタミン)」
レミニールもアリセプトと同様に、アセチルコリンの分解酵素であるコリンエステラーゼを阻害することによって脳内のアセチルコリン濃度を上昇させる薬ですが、さらにニコチン性アセチルコリン受容体に対するAPL作用により脳内コリン機能を増強させることにより、アルツハイマー型認知症における記憶障害の進行を抑制することが期待できる薬です。APL 作用とは、ニコチン性アセチルコリン受容体において、レミニールがアセチルコリンとは異なる部位(アロステリック部位)に結合し、アセチルコリンが受容体に結合した際の薬の働きを増強させる作用のことです。この薬の臨床試験では、認知機能障害悪化の抑制、日常生活動作の維持、介護者の見守り時間減少などの治療効果が示されています。適応は軽度および中等度のアルツハイマー型認知症です。
体に貼って認知症を治療する薬「リバスタッチパッチ・イクセロンパッチ(リバスチグミン)」
リバスタッチパッチ・イクセロンパッチは、アセチルコリンの分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの阻害作用に基き、脳内のアセチルコリン濃度を上昇させて脳内コリン作動性神経機能を活性化する薬です。コリンエステラーゼにはアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2種類があります。アセチルコリンエステラーゼは神経細胞に存在し、神経伝達物質であるアセチルコリンのみを分解します。ブチリルコリンエステラーゼは血管内皮細胞やグリア細胞に存在しています。アルツハイマー型認知症の進行にともなって神経細胞の脱落が起こり、アセチルコリンエステラーゼの活性は低下する一方、脳内のグリア細胞の数は増加し、相対的にブチリルコリンエステラーゼの活性が上昇するため、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用だけでなくブチリルコリンエステラーゼ阻害作用を合わせ持つこの薬は、脳内において更なるアセチルコリン濃度の上昇が期待されます。小野薬品から出ている薬には「リバスタッチパッチ」、ノバルティスファーマから出ている薬には「イクセロンパッチ」という製品名が付けられています。この薬の剤形はパッチ剤(経皮吸収型製剤)です。パッチ剤では、緩やかで持続的な薬の供給が24時間行われ、最高血中濃度は経口剤よりも低く、消化器症状の副作用が生じることもあまりありません。その一方、パッチ剤という性格上、皮膚症状という副作用が起こります。しかし、副作用といっても発赤や痒みなどといった軽微なものがほとんどで、忍容性には大きな支障のないことが示されています。この薬の適応は軽度および中等度のアルツハイマー型認知症です。パッチ剤の利点としては、服薬の確認が容易で、副作用が出た場合には剥がすことによって薬の吸収を止めることが出来る点です。また、嚥下障害のある方に投与することも可能です。
認知症を治療する薬「メマリー(メマンチン)」
メマリーは、他の薬と違ってグルタミン酸が作用するNMDA受容体に働きかける薬です。アルツハイマー型認知症の原因にはアセチルコリン仮説の他にもいくつかの仮説があります。この薬は「グルタミン酸仮説」に基く治療薬です。グルタミン酸は脳内の主な興奮性神経伝達物質で、その受容体のひとつにNMDA受容体というものがあります。NMDA受容体は大脳皮質や海馬に高密度に存在し、記憶に関係しています。アルツハイマー型認知症の記憶障害には、このグルタミン酸ニューロンや NMDA 受容体の減少が関与していると考えるのが「グルタミン酸仮説」です。この仮説では、グルタミン酸がNMDA受容体を過剰に刺激することによって神経細胞死や記憶形成過程の障害が引き起こされると考えられています。メマリーは、NMDA受容体への過剰な刺激を抑えることによって神経細胞を保護し、記憶や学習機能障害を抑制する薬です。適応は中等度および重度のアルツハイマー型認知症です。
認知症の治療と脳のゴミ
成人の脳では、1日に約7gのタンパク質のゴミが作られています。このゴミは、適切に排泄されないと脳に蓄積し、健康を損なう可能性が高いといわれています。認知症の原因物質として疑われるアミロイドβ(ベータ)も脳で生じるゴミの一種です。通常、これらのゴミはグリンパティックシステムと呼ばれる脳のクリーニングシステムによって処理されていますが、ここに何らかのトラブルが生じるとゴミは脳に蓄積されることになります。最新の研究では、脳のゴミの排泄が認知症を治療するカギになるのではないかと考えられています。
体内ゴミの排泄システム
一般に、人間の体で生じたゴミは腎臓や肝臓で処理されて体外へ排泄されます。その過程で、体中に張り巡らされたリンパ系が様々な組織で生じたゴミを回収し、細い導管→太い導管→血管の順に流れ込み、ゴミを腎臓や肝臓へと運び込みます。かつて、脳にはリンパ系のようなゴミを回収する仕組みは存在せず、脳で生じたゴミは全て脳内で処理されると考えられていました。しかし、近年の研究によって脳にもゴミを回収する仕組みが備わっていることがわかりました。この仕組みを「グリンパティックシステム」といいます。脳の血管は「血管周囲腔(けっかんしゅういくう)」に囲まれています。両者の間には脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体が流れ、血管周囲腔の外側は「アストロサイト」と呼ばれる支持細胞とつながっています。脳で生じたゴミは脳脊髄液中に排泄され、アストロサイトを通じて静脈内に送られて腎臓や肝臓で処理されることがわかっています。認知症の脳内では、グリンパティックシステムが正常に機能せずにアミロイドβという脳のゴミが蓄積し、記憶が失われていくのではないかといわれています。
記憶力の低下を治療する手法
グリンパティックシステムは、近年になって明らかにされた脳のゴミ処理システムです。しかし、この存在は以前より予見され、手術中に、時折、脳で生じたゴミの排泄ルートである脳脊髄液の流れ方に異変が起きることに気付いた医師がいます。この医師は、脳脊髄液の流れに異常が生じると記憶力・集中力の低下、頭痛、無気力、慢性疲労など様々な現象が起きることを発見し、さらに、外部からの手指刺激を用いた脳脊髄液の流動調整によって、これらの症状が治癒することを見出だしました。この手法は頭蓋仙骨療法(とうがいせんこつりょうほう)と呼ばれ、まさにグリンパティックシステムの正常化を目指す手法と考えられます。グリンパティックシステムの研究には、脳における水の出入り口となる「アクアポリン4」というタンパク質の発見が重要な役割を果たしましたが、アクアポリン4の働きを証明するためには脳内の水の動きを生きたまま可視化する必要がありました。当時は現在のような高度な顕微鏡技術がなかったため、世の中の人にグリンパティックシステムの存在が広く認知されるのは難しかったのかもしれませんが、頭蓋仙骨療法における脳脊髄液の流動システムの考え方は、まさしくグリンパティックシステムそのものです。
穏やかで快適な日々を取り戻す「漢方薬アロマタッチ」
私たちは、この手法をさらに進化させ、脳に働きかける漢方薬、大きなリラックス効果を生むメディカルアロマシャワー、温泉療法を頭蓋仙骨療法と融合し、様々な角度から脳を元気にすることを目指した「漢方薬アロマタッチ」を開発いたしました。漢方薬、メディカルアロマ、頭蓋仙骨療法、温泉療法をそれぞれ単独で用いるのではなく、全てを同時に行うことに私たちは大きな意義を見出しています。漢方薬アロマタッチでは漢方薬を必要とするため、薬剤師の資格と医薬品の取り扱い許可が必要です。また、メディカルアロマシャワーの実践には美容師の資格と美容所の許可が必要です。私たちは、これら全ての資格と許可を所有し、みなさまに安心してご利用いただける環境を整えています。漢方薬アロマタッチは、既成概念にとらわれず、何とか認知症のお悩みを解決する方法はないかと模索した結果、ようやく辿り着いた手法です。漢方薬アロマタッチが目指すのは穏やかで快適な日々を取り戻すことです。認知症対策のひとつとしてお考えいただければ幸いです。
このページは医薬関係者への情報提供を目的としています。
薬剤師・美容師の資格を所有しています。幼少時より自然食品を中心とした生活を送る中で食事の大切さを学び、その後、漢方薬を学びました。日々、苦痛が少なく効果が大きい健康法の開拓に努めています。