アルツハイマー型認知症の治療は可能?物忘れの秘策「漢方薬アロマタッチ」

アルツハイマー型認知症脳では「アセチルコリン」という物質が減少していることがわかっています。アセチルコリンは脳内における意識や知能、記憶、情動、睡眠リズムなどを調整する重要な神経伝達物質で、脳内で合成されたアセチルCoAと血液から供給されたコリンを原料としてアセチルコリン合成酵素(コリンアセチルトランスフェラーゼ)によって合成されます。合成されたアセチルコリンは、神経細胞から放出されて情報の伝達を行い、その後、アセチルコリン分解酵素(コリンエステラーゼ)によって速やかに分解されます。アルツハイマー型認知症脳では、この分解酵素よりも早く合成酵素の活性が低下するため、アセチルコリンの不足が生じます。アセチルコリン神経細胞は、重篤なアルツハイマー型認知症の初期に損傷される神経細胞で、海馬や大脳皮質といった記憶に関わる部分に信号を送っていることから、記憶機能に関する重要な役割を担っていると考えられています。

記憶障害を回復できる可能性

記憶の過程は、物事を覚える「記銘」、脳に留める「保持」、必要な時に引き出す「想起」という3つの段階に分けることができます。想起には、保持されている記憶をそのままの形で再現する「再生記憶」、以前経験したことを『経験した』と認識する「再認記憶」、保持されている記憶のいくつかを組み合わせて再現する「再構成記憶」の3種類があります。再認記憶は、私たちが持つ最も基本的な記憶機能のひとつで、過去に見た物や出合った人、訪れた場所などを思い出す時には不可欠な機能ですが、アルツハイマー型認知症の初期症状では再認記憶の障害が強く現れます。同時に、アセチルコリンを伝達物質とする神経細胞が脱落を始めることが知られています。このことから、アセチルコリン神経細胞を治療することによって記憶障害を回復できる可能性が示唆されます。

物忘れの秘策「漢方薬アロマタッチ」

私たちは、漢方薬、メディカルアロマ、頭蓋仙骨療法を融合した「漢方薬アロマタッチ」という手法によって、本格的な物忘れ対策を行っています。なかなか根本的な物忘れの改善方法が見つからないといわれているなかで、私たちは漢方薬アロマタッチによって物忘れが回復していく過程を経験しています。最も重症な例としては、時間や場所への見当識が失われ、自分が今現在どこにいるのかも認識していない状態から回復した例です。大学病院で重度認知症という診断を受けており、顔の表情も乏しく、笑顔は一切ありません。片手が硬直し、自立歩行も不可能な状態で、初日は両脇から2人に支えられて来ました。そこで、まずは3日間連続で漢方薬アロマタッチを行いました。すると、驚くことに3日目には自立歩行が可能になったのです。その後、1週間に1度のペースで継続したところ、3ヶ月後には物忘れもなくなり、笑顔で日常会話ができる程度にまで回復しました。半年後には硬直していた腕を自由に動かすことが可能になり、さらにその半年後にはパソコンの打ち方を習得し、パソコンを使って手紙が書けるまでの回復を遂げたのです。

体内アセチルコリン濃度が上昇

このような著しい回復をみせた理由のひとつとして、漢方薬アロマタッチとアセチルコリン神経細胞との深い関係性が考えられます。アセチルコリンは記憶以外にも体内で様々な働きをしている物質で、例えば心臓に作用すると、心臓はリラックスモードに入って心拍数が低下します。そこで、漢方薬アロマタッチとアセチルコリンとの関係を調べるため、漢方薬アロマタッチ前後において5名の心拍数を計測してみました。計測結果は、73 →65、95 →82、78 →70、84 →83、75 →68となり、いずれも心拍数が低下するという結果が得られました。また、アセチルコリンには眼圧を下げる作用もあり、緑内障の治療薬にはアセチルコリン濃度を一定に保つ薬が使用されます。この点に関しても漢方薬アロマタッチとの興味深い共通点が見られます。かつて、複数の病院で緑内障と診断され、近々手術する予定だったはずの人が、手術の順番待ちをしている間に漢方薬アロマタッチを複数回行ったところ、眼圧が低下し、正常に戻ったために手術をする必要がなくなったという例があります。さらに、漢方薬アロマタッチが終わると空腹感を感じるという感想を多くいただきますが、アセチルコリンには腸の蠕動運動を活性化し、空腹感をもたらす働きもあります。このような事実に基いて考えると、漢方薬アロマタッチを行うことによってアセチルコリン神経細胞が活性化され、体内におけるアセチルコリン濃度が上昇しているのではないかと推測できます。

アミロイドβの凝集を抑制する漢方薬成分

また、アルツハイマー型認知症脳では、アミロイドβ(ベータ)というタンパク質が過剰に凝集していることがわかっています。アミロイドβの過剰な凝集は神経細胞毒性を示します。このアミロイドβの過剰な凝集を抑制するという化合物が発見されています。この化合物はアルカニンとシコニンという物質で、いずれも天然資源に由来する化合物です。このふたつの化合物は神経保護作用を持っていることが検証済みで、シコニンは神経細胞の萎縮を抑制する作用も合わせ持つことがわかっています。私たちは、物忘れでお悩みの方にはアルカニンとシコニンを豊富に含有する漢方薬を用いた漢方薬アロマタッチを行います。これを継続的に使用することにより、神経細胞を元気にする可能性が期待できます。

きれいな脳にクリーニング

脳は、脳脊髄液(のうせきずいえき)という組織に囲まれています。脳脊髄液は、クッションとして脳を保護する役割を担うとともに、脳で不要になった物質が排泄される場所で、きれいな脳環境を保つ働きもしています。脳は組成の約80%を水が占めるという非常に水分が豊富な組織であるため、水分の動きが脳の様々な機能に大きな影響を与えているといわれています。近年、アルツハイマー型認知症の脳内では水流の滞りが発生し、これがアミロイドβの蓄積に関与しているという報告がされました。脳で不要となったアミロイドβが脳脊髄液に排泄されずに脳内で蓄積されるというのです。漢方薬アロマタッチに取り入れている頭蓋仙骨療法は、まさに滞った脳脊髄液の流れを正常化し、脳をクリーニングすることを目的としたものです。私たちは、これにメディカルアロマシャワーを加え、同時に頭部の指圧を行うことによって、滞った脳脊髄液の流れをゆっくりと本来の流れに戻し、きれいな脳環境を作ることを目指しています。このように、物忘れと関係が深いといわれているアセチルコリン、アミロイドβなどに対して、漢方薬、メディカルアロマ、頭蓋仙骨療法を複合的に活用することによって適切に対処するのが漢方薬アロマタッチです。経験と実績に基づき、改良を繰り返すことによって生まれた実践的な手法です。

物忘れを予防する!

アルツハイマー型認知症脳では、異常なタウ蛋白の蓄積も見られます。タウ蛋白の蓄積は認知症の症状進展に強く関与しており、20歳以下の若年者でも25%、30代では90%以上で異常なタウ蛋白の凝集が始まっていることが知られています。詳しく調査したところ、アルツハイマー型認知症では初期段階から脳脊髄液でタウ蛋白が検出されることがわかりました。このことから、脳脊髄液の正常化を目標のひとつとする漢方薬アロマタッチを早い時期から行うことは、物忘れの予防としても有効なのではないかと考えられます。

アルツハイマー型認知症とアセチルコリンの歴史

1970年代後半になって、アルツハイマー型認知症脳でアセチルコリンが減少していることが判明しました。さらに1980年代、アルツハイマー型認知症脳では、脳の深部に位置する大脳基底核のアセチルコリンを産生する神経細胞が減少していることがわかり、これがアルツハイマー型認知症の原因であるとするアセチルコリン仮説が生まれました。そこで、減少したアセチルコリンを薬として補充することによってアルツハイマー病の治療が可能になるのではないかと考えられました。しかし、脳には血液脳関門という、いわば関所のような仕組みがあり、アセチルコリンは血液脳関門を通過することができないため、アセチルコリンを投与しても脳に届けることはできません。そこで、血液脳関門を通過できるアセチルコリンの原料となるコリン、さらにその原料であるレシチンという物質をそれぞれ薬として投与するという方法が試みられました。しかし、どちらもアルツハイマー病の改善には至らず、アセチルコリンの補充療法は失敗に終わりました。

医療で使用されている薬

アルツハイマー型認知症脳では、アセチルコリンを伝達物質とする神経細胞が脱落を始めることが知られています。病状が進行するに従って神経細胞の脱落も加速します。この進行速度を緩やかにすることを目的として開発されたのがコリンエステラーゼ阻害薬という薬です。アセチルコリンは、コリンとアセチルCoAを原料としてアセチルコリン合成酵素(コリンアセチルトランスフェラーゼ)によって神経細胞で産生され、シナプス小胞という袋のような組織に蓄えられます。そして、必要に応じて他の神経細胞との接合部の隙間に放出され、情報を伝達しますが、その役目が終わるとアセチルコリンはコリンエステラーゼという分解酵素によって速やかに分解されます。アルツハイマー型認知症脳では、このアセチルコリン分解酵素よりも早く合成酵素の活性が低下するため、アセチルコリンの不足が進行します。そこで、この分解酵素の作用を阻害し、アセチルコリンの分解を防ぐことによってアセチルコリンの減少を軽減しようと考え出された薬がコリンエステラーゼ阻害薬です。現在、病院で処方される治療薬はコリンエステラーゼ阻害薬が中心となっています。

病院で処方されるアルツハイマー型認知症の治療薬1:ドネペジル(アリセプト)

ドネペジルは、現在、病院で処方されるアルツハイマー型認知症の治療薬として中心的存在となっている薬です。アメリカのファイザー社と日本のエーザイ社によって共同開発され、アルツハイマー型認知症の治療薬として世界で最初に承認された薬です。ドネペジルは、アセチルコリンを分解する酵素であるコリンエステラーゼを可逆的に阻害することによって脳内のアセチルコリンの濃度を上げ、神経細胞機能の活性化を目指す薬です。この薬の服用によって「落ち着きがみられ、物忘れが少なくなる」「会話の疎通性が良くなる」「服用前に比べて話の理解力が上がる」「物事の手順を考えられるようになる」「家族を他人と間違えることが少なくなる」「物事を思い出すまでの時間が短くなる」といった症状改善効果がみられるといいます。このように薬の服用によってアルツハイマー型認知症の進行が抑えられ、10ヶ月前後は症状を維持できるといわれます。また、この薬は「軽度から高度に至るアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」に対する適応が承認されているため、重症度に関係なく使用されます。1日1回の服用で、主な副作用は消化器症状です。

病院で処方されるアルツハイマー型認知症の治療薬2:ガランタミン(レミニール)

ガランタミンもドネペジルと同様に、アセチルコリンの分解酵素であるコリンエステラーゼを阻害することによって脳内のアセチルコリン濃度を上昇させる薬ですが、さらにニコチン性アセチルコリン受容体に対するAPL作用により脳内コリン機能を増強させることにより、アルツハイマー型認知症における記憶障害の進行を抑制することが期待できる薬です。APL 作用とは、ニコチン性アセチルコリン受容体において、ガランタミンがアセチルコリンとは異なる部位(アロステリック部位)に結合し、アセチルコリンが受容体に結合した際の薬の働きを増強させる作用のことです。この薬の臨床試験では、認知機能障害悪化の抑制、日常生活動作の維持、介護者の見守り時間減少などの治療効果が示されています。適応は軽度および中等度のアルツハイマー型認知症です。病院で処方されるこの薬は1日2回の服用が必要で、主な副作用は消化器症状です。

病院で処方されるアルツハイマー型認知症の治療薬3:リバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ)

リバスチグミンは、アセチルコリンの分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの阻害作用に基き、脳内のアセチルコリン濃度を上昇させて脳内コリン作動性神経機能を活性化する薬です。コリンエステラーゼにはアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2種類があります。アセチルコリンエステラーゼは神経細胞に存在し、神経伝達物質であるアセチルコリンのみを分解します。一方、ブチリルコリンエステラーゼは血管内皮細胞やグリア細胞に存在しています。アルツハイマー型認知症の進行にともなって神経細胞の脱落が起こり、アセチルコリンエステラーゼの活性は低下します。一方、脳内のグリア細胞の数は増加し、相対的にブチリルコリンエステラーゼの活性が上昇するため、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用だけでなくブチリルコリンエステラーゼ阻害作用を合わせ持つこの薬は、脳内での更なるアセチルコリン濃度の上昇が期待されます。小野薬品から出ている薬には「リバスタッチパッチ」、ノバルティスファーマから出ている薬には「イクセロンパッチ」という製品名が付けられています。この薬の剤形はパッチ剤(経皮吸収型製剤)です。パッチ剤では、緩やかで持続的な薬の供給が24時間行われ、最高血中濃度は経口剤よりも低く、消化器症状の副作用が生じることもあまりありません。その一方、パッチ剤という性格上、皮膚症状という副作用が起こります。しかし、副作用といっても発赤や痒みなどといった軽微なものがほとんどで、忍容性には大きな支障のないことが示されています。この薬の適応は軽度および中等度のアルツハイマー型認知症です。パッチ剤の利点としては、服薬の確認が容易で、副作用が出た場合には剥がすことによって薬の吸収を止めることが出来る点です。また、嚥下障害のある方に投与することも可能です。

病院で処方されるアルツハイマー型認知症の治療薬4:メマンチン(メマリー)

この薬は、病院で処方される他の薬と違ってグルタミン酸が作用するNMDA受容体に働きかける薬です。アルツハイマー型認知症の原因としてはアセチルコリン仮説の他にも仮説があり、この薬は「グルタミン酸仮説」に基く治療薬です。グルタミン酸は脳内の主な興奮性神経伝達物質で、その受容体のひとつにNMDA受容体というものがあります。NMDA受容体は大脳皮質や海馬に高密度に存在し、記憶に関係しています。アルツハイマー型認知症の記憶障害には、このグルタミン酸ニューロンや NMDA 受容体の減少が関与していると考えるのが「グルタミン酸仮説」です。この仮説では、グルタミン酸がNMDA受容体を過剰に刺激することによって神経細胞死や記憶形成過程の障害が引き起こされると考えられています。この薬は、NMDA受容体への過剰な刺激を抑えることによって神経細胞を保護し、記憶や学習機能障害を抑制する作用を持つ薬です。適応は中等度および重度のアルツハイマー型認知症です。この薬は1日1回の服用で、主な副作用は、めまい、便秘、体重減少、頭痛などです。


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