線維筋痛症の「こわばりを伴う痛み」に漢方薬アロマタッチ

線維筋痛症は、一般的な臨床検査では異常が見つからないにもかかわらず、全身の強い痛み・こわばり・睡眠障害・うつ状態など様々な症状が起きる病気です。なかでも、こわばりに悩まされる方は多いといいます。そこで、ここでは線維筋痛症における「こわばり」を伴う痛みの原因と特徴を分析し、これに基いた漢方薬を使用する治療法のひとつをご紹介いたします。
線維筋痛症の「こわばり」を伴う痛みの原因と特徴

線維筋痛症では、痛みとともに高い頻度で筋肉や関節の「こわばり」が生じるといわれています。では、この痛みと「こわばり」は、どのようにして生じるのでしょうか?漢方では、健康を害して疾病を引き起こすものを邪と呼びます。それに対して、体が持っている生命力や抵抗力のことを正気と呼びます。正気が低下すると、生体を取り巻く風、寒、湿、熱などの自然現象が邪となって、体表に襲い掛かかってきます。これを取り除くことができないと、邪は筋肉、関節、経絡に侵入し、気血の運行を妨げます。「不通則痛(通ぜざれば則ち痛む)。」これが痛みに対する漢方の基本認識です。すなわち、邪の侵入によって気血の運行が妨げられて痛みが生じるのです。そして、こわばりを伴う痛みは、風、寒、湿の影響によるところが大きく、特に湿邪が中心となって発症することが多いといわれます。このタイプの疼痛は、体が重く感じられ、皮膚にしびれを生じ、温めることによって疼痛は一時的に緩和されるという特徴を持ちます。
漢方薬が線維筋痛症の「こわばりを伴う痛み」を鎮める

線維筋痛症で起きる「こわばりを伴う痛み」は、雨の日や低気圧などの湿度の高い日に誘発されたり、悪化したりするといわれます。手足の関節が重苦しい痛みに包まれ、むくみが生じることもあります。症状は足腰に現れやすく、ときに尿量の減少、しびれ、歩行困難などを伴います。このような場合に私たちが使用する漢方薬の中で、比較的頻度の高い生薬が防已です。防已は、組織間の余分な水分を血液中に吸収し、利尿作用によって排泄します。特に臓器組織内の静脈や毛細血管内の血流が停滞した状態に有効とされています。防已の基原は、ツヅラフジ科(Menispermaceae)のオオツヅラフジ Sinomenium acutum Rehder et Wilson (Menispermaceae ツヅラフジ科)のつる性の茎および根茎を、通例、横切したもので、乾燥が良く、菊花紋理のあるもの、とりわけ導管が著しいものが良いとされています。また、防已に含まれるシノメニンという成分は、鎮痛薬に用いられるモルヒネと同じ骨格を持つ光学異性体で、防已は漢方では主に下半身の浮腫や関節水腫などの利水、関節痛やリウマチなどの鎮痛を目的として使用されます。

防已と同じように体表の水毒を処理する効果が期待される生薬が黄耆です。黄耆については、漢方医学界の最高メンバーが記したとされる「漢方診療医典」に止汗、利尿、強壮剤で、体表の水毒を去る。虚弱者、栄養不良、自汗、盗汗、体腫、小便不利に用いる
と解説されています。また、体表の気を補い、気を巡らせることによって外邪の侵入を防ぐ作用が期待される生薬です。黄耆の基原は、キバナオウギ Astragalus membranaceus Bunge又は Astragalus mongholicus Bunge(Leguminosae マメ科) の根で、よく乾燥し、太く(小指大程度が良い)、皮に皺紋が少なく、質は緻密で柔軟、弾力性があり、容易に折れにくく、甘味を感じ、断面に空心(空になった部分)や黒心(黒くなった部分)のないものを良品とします。この他に、消化機能を高め、胃腸を丈夫にする働きが期待できる生薬などを配合し、線維筋痛症の「こわばりを伴う痛み」への対策を行います。
脳へのアプローチが大切な線維筋痛症の疼痛対策

人間の体は、組織が損傷を受けると血漿(血液中の有形成分 <赤血球、白血球、血小板> を除いた液体成分)から発痛物質ブラジキニンを遊離させ、知覚神経を興奮させて体がダメージを受けていることを知らせます。同時に、細胞膜からはシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用によってプロスタグランジンが生成されます。プロスタグランジンは、ブラジキニンによる発痛作用を増強する物質です。バファリン、イブ、ロキソニン、ボルタレンなどの鎮痛薬(NSAIDs)は、シクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによってプロスタグランジンの生成を減少させ、痛みの伝達レベルを下げる薬です。鎮痛剤(NSAIDs)は急性疼痛には有効とされていますが、線維筋痛症のような慢性疼痛には効果が低いといわれます。

そこで、慢性疼痛における神経回路のメカニズムを明らかにするため、特殊な顕微鏡を用いてマウスの脳を生きたまま観察したところ、大脳皮質中のアストロサイトという細胞が深く関わっていることがわかりました。アストロサイトは中枢神経系に存在するグリア細胞のひとつで、神経細胞の補助や脳を有害物質から守る役割を担い、脳で生じたゴミの処理を行っています。脳のゴミを処理する仕組みは、グリンパティックシステムといい、近年になって明らかにされたものです。このシステムが乱れると体に様々な悪影響が生じることがわかってきています。近年の顕微鏡技術の発展がグリンパティックシステムの科学的な証明につながりましたが、それ以前にもグリンパティックシステムの存在は示唆されていました。そして、このシステムの乱れを整えることによって線維筋痛症のような慢性疼痛、関節炎、不眠症、うつ病などに悩む人々を救ったといわれているのが頭蓋仙骨療法(とうがいせんこつりょうほう)です。最新の研究情報を取り入れ、さらに実績のある手法を実践することによって、病における未知なる領域が切り開けるのではないかという期待が高まります。
漢方薬アロマタッチによる線維筋痛症への対応

線維筋痛症は、体の痛みや「こわばり」の他、うつ状態や睡眠障害などに悩まされる大変つらい病です。また、症状が表面に現れにくく、周りの人々に理解されにくいという状況も精神的苦痛を増やす要因のひとつかもしれません。私たちは、ストレスを軽減する意味でもメディカルアロマを積極的に活用し、脳へのアプローチを重視します。また、痛みの緩和や神経系疾患に対する効能が期待される鳥取県の三朝温泉、秋田県の玉川温泉などの療養泉における天然鉱石にも注目しています。私たちは、ストレスや痛みに対して有効とされるものに加え、漢方薬や頭蓋仙骨療法などを効果的に活用する漢方薬アロマタッチという手法によって線維筋痛症への対策を行っています。様々な痛みに悩まれている方々の多くが一日でも早く辛い痛みから解放され、快適な日々を過ごせるようになることをお祈りいたします。
薬剤師・美容師の資格を所有しています。幼少時より自然食品を中心とした生活を送る中で食事の大切さを学び、その後、漢方薬を学びました。日々、苦痛が少なく効果が大きい健康法の開拓に努めています。