認知症の進行と漢方薬アロマタッチによる対策

認知症としっかり向かい合うためには、現在の症状がいつまで続き、一般的にどのような進行過程を辿るのかといった情報を知るのは意義のあることだと考えられます。まずは、軽度認知障害(MCI)と呼ばれる認知症の手前の段階から進行する一般的な過程を記したいと思います。

軽度認知障害(MCI)とは

認知症とは、進行性の認知機能低下により、日常生活や社会生活に支障をきたす状態とされています。アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症の多くは徐々に認知機能の低下が進行するため、正常とはいえないが認知症と診断するには至らない、いわば認知症の一歩手前の状態が存在します。このような状態を軽度認知障害(MCI)といいます。軽度認知障害(MCI) は「認知機能の低下に関する訴えがきかれ、認知機能は年齢相応より低下するが認知症には到らず、基本的な日常生活には支障がない状態」と定義されています。軽度認知障害に関する数年間の調査により、軽度認知障害から高い確率で認知症に進行することが明らかになっています。

進行していく認知症の症状と重症度との関係

臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating ; CDR)にしたがって、正常な状態から認知症に進行していく過程を見ていきます。

正常な状態の把握

まずは正常な状態を整理してみます。正常な状態では、もちろん記憶障害はありませんが、軽度の断続的な物忘れを生じることはあります。見当識障害はみられません。見当識障害とは、「今いる場所はどこなのか」、「今日は何月何日なのか」、「今、自分が話をしている相手は誰なのか」といった認識ができなくなる障害のことです。地域社会との関わりにおいては、社会集団、買い物、仕事、ボランティアなどにおいて、通常レベルで自立して機能することができます。日常生活や仕事上の問題を自分で解決することも可能です。また、金銭管理に関しても問題がなく、判断力も過去と同程度にできる状態です。さらに、趣味や知的関心、家庭生活が十分に保持され、介護を全く必要としない状態です。

軽度認知障害(MCI )への進行

軽度認知障害(MCI )に進行すると、軽い物忘れが頻繁に起こるようになり、出来事を部分的に思い出す良性健忘が生じてきます。見当識の面では時間経過に関する軽度の困難さが出現し始めます。例えば、最近起こったニュースの内容や数週間前に行った旅行での出来事などの物事自体は憶えていても、「いつ」「どこで」といった一歩踏み込んだ内容については思い出すことができなくなります。また、問題解決能力や 類似点・相違点の判断力に軽度の障害が認められるようになります。社会集団、買い物、仕事、ボランティアなどの活動にも軽度の障害が出始め、家庭生活や趣味、知的関心も薄れてきます。まだ、この段階では介護は必要ありません。

軽度認知症への進行

軽度認知症に進行すると、中等度の記憶障害により日常生活に支障が生じるようになります。特に最近の出来事に対する記憶に障害が生じます。時間進行関係の見当識にも中程度の障害が出てきます。検査の場所における見当識は良好ですが、他の場所では地誌的見当識に障害(熟知している場所で道に迷う症状)が起きることがあります。また、問題解決能力や 類似点や相違点の判断力に中程度の障害が認められるようになります。通常、社会的判断は保持されます。仕事、買い物、ボランティア、社会集団での活動には関わっていても自立して機能できない状態です。このレベルは、簡単な検査では正常と診断されることも多いといわれます。家庭生活の面では、軽度でも確実な障害がみられ、複雑な家事はできなくなり、手間のかかる趣味への関心もなくなります。介護が奨励される状態です。

軽度認知症における問題解決能力と判断力の障害の例

・電気やガスや水道が止まってしまったときに自分で適切に対処できない。
・一日の予定や計画を自分で立てることができない。
・仕事上の失敗が多くなった。
・コンピュータがうまく使えなくなった。
・町内会の会計がうまくできなくなった。
・確定申告が自分でできなくなった。
・通帳や財布が見当たらないと言ってパニックになることがよくある。

中等度認知症への進行

中等度認知症に進行すると、重度の記憶障害が生じるようになり、過去に十分学習したことだけしか覚えておらず、新しい記憶は急速に失われるようになります。特に、時間進行関係に重度の障害を持ち、一般的に時間的見当識障害が現れるようになり、地誌的見当識障害もよく見られるようになります。問題解決能力や 類似点、相違点の判断力にも重度の障害が認められるようになります。多くの場合、社会的判断力も障害されます。家庭外での自立は不可能ですが、自宅外で第三者の目に触れても活動可能に見られます。家事は非常に簡単なことができるのみで、物事への関心は限定されたものになります。介護の面では、服を着たり、衛生管理といった身の周りのことに介助が必要となります。

中等度認知症の症状例

・問診で、現住所、電話番号、卒業した大学や高校名といった大切な情報を思い出せない。
・場所、日付、曜日、季節などが混乱する。
・簡単な暗算をすることが困難になる(例:40から4ずつ引く、あるいは20から2ずつ引く)。
・季節や状況に合わせて自分の服装を選ぶのが困難になる。
・通常、自分の名前や自分に関する知識、配偶者や子供の名前は覚えている。
・通常、食事やトイレの使用に介助を必要としない。

重度認知症への進行

重度認知症に進行すると、より重度の記憶障害が生じるようになり、記憶は断片的なものが残っている程度になります。この状態に至ると時間や場所への見当識は失われます。ただし、人物への見当識は保たれます。また、問題解決能力や判断力も失われ、自宅外へ連れ出して生活することは不可能となります。家庭内でも意味のある生活活動は困難になり、日常生活に対する十分な介護が必要とされ、失禁症状も頻繁に現れるようになります。

「脳のゴミを捨てる」という認知症対策

認知症の原因といわれる脳のゴミ「アミロイドβ」

成人の脳では、日々7gほどのタンパク質のゴミが作られ、適切な排泄が行われないと脳に蓄積し、健康を損なうといわれています。認知症の原因物質ではないかといわれるアミロイドβ(ベータ)も脳で生じるゴミの一種です。通常、これらのゴミはグリンパティックシステムと呼ばれる脳のクリーニングシステムによって処理されていますが、ここに何らかのトラブルが生じるとゴミは脳に蓄積されることになります。「脳に溜まったゴミをいかに捨てるか?」これが認知症対策のカギになると考えられます。

脳のゴミを捨てる仕組み「グリンパティックシステム」

一般に、人間の体で生じたゴミは腎臓や肝臓で処理され、体外へ排泄されます。その過程では、体中に張り巡らされたリンパ系が様々な組織で生じたゴミを回収し、細い導管→太い導管→血管の順に流れ込み、ゴミを腎臓や肝臓へと運び込むのです。かつて、脳にはリンパ系のようなゴミを回収する仕組みは存在せず、脳で生じたゴミは全て脳内で処理されると考えられていました。しかし、近年の研究によって脳にもゴミを回収する仕組みが備わっていることが発見されました。この仕組みが「グリンパティックシステム」です。脳の血管は「血管周囲腔(けっかんしゅういくう)」に囲まれ、両者の間には脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体が流れています。血管周囲腔の外側は「アストロサイト」と呼ばれる支持細胞とつながっています。脳で生じたゴミは脳脊髄液中に排泄され、アストロサイトを通じて静脈内に送られて腎臓や肝臓で処理されることがわかっています。認知症の脳内では、グリンパティックシステムが正常に機能せずにアミロイドβという脳のゴミが蓄積し、記憶が失われていくのではないかといわれています。

漢方薬、メディカルアロマ、温泉療法、頭蓋仙骨療法を融合した「漢方薬アロマタッチ」

グリンパティックシステムは、近年になって明らかにされた脳のゴミ処理システムです。しかし、この存在は以前より予見され、時折、脳で生じたゴミの排泄ルートである脳脊髄液の流れ方に異変が起きることに気付いた医師がいます。この医師は、脳脊髄液の流れに異常が生じると記憶力・集中力の低下、頭痛、無気力、慢性疲労など様々な現象が起きることを発見し、さらに、外部からの手指刺激を用いた脳脊髄液の流動調整によって、これらの症状が治癒することを見出だしました。この手法は頭蓋仙骨療法(とうがいせんこつりょうほう)と呼ばれ、まさにグリンパティックシステムの正常化を目指す手法と考えられます。グリンパティックシステムの研究には、脳における水の出入り口となる「アクアポリン4」というタンパク質の発見が重要な役割を果たしましたが、アクアポリン4の働きを証明するためには脳内の水の動きを生きたまま可視化する必要がありました。当時は現在のような高度な顕微鏡技術がなかったため、世の中の人にグリンパティックシステムの存在を広く認知されるのは難しかったのかもしれませんが、頭蓋仙骨療法における脳脊髄液の流動システムの考え方は、まさしくグリンパティックシステムそのものです。

私たちは、この手法を進化させ、脳に働きかける漢方薬、大きなリラックス効果を生むメディカルアロマシャワー、温泉療法を頭蓋仙骨療法と融合し、様々な角度から脳を活性化させることを目指した「漢方薬アロマタッチ」を開発いたしました。漢方薬、メディカルアロマ、頭蓋仙骨療法、温泉療法をそれぞれ単独で用いるのではなく、全てを同時に行うことに私たちは大きな意義を見出しています。漢方薬アロマタッチでは漢方薬を必要とするため、薬剤師の資格と医薬品の取り扱い許可が必要です。また、メディカルアロマシャワーの実践には美容師の資格と美容所の許可が必要です。私たちは、これら全ての資格と許可を所有しています。漢方薬アロマタッチは、既成概念にとらわれず、何とか認知症のお悩みを解決する方法はないかと模索した結果、ようやく辿り着いた手法です。認知症対策のひとつとしてお考えいただければ幸いです。