認知症の進行を遅らせる可能性と漢方薬アロマタッチ

認知症は、もの忘れや徘徊以外にも様々な症状を伴い、進行度によっても症状が異なります。適切な対応をするために、まずは、認知症の進行とともに変化する症状を正確に把握することが大切です。そして、その進行を遅らせる手段はあるのかどうか?ここでは、認知症の進行に伴う症状の変化とその進行を遅らせる手段の様々な可能性を探っていこうと思います。

認知症の進行による重症度を評価する臨床認知症尺度

認知症の重症度を評定するための検査として臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating ; CDR)というものがあります。臨床認知症尺度は、記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況および趣味・関心、介護状況の6項目について、5段階で重症度を評価し、それらを総合して、健康(CDR:0)、認知症の疑い(CDR:0.5)、軽度認知症(CDR:1)、中等度認知症(CDR:2)、高度認知症(CDR:3)のいずれかに評定します。多くの場合、CDR=0.5を軽度認知障害(MCI)、CDR=1以降を認知症として捉えます。臨床認知症尺度は、認知症が重度となって患者さんからの協力が難しい場合でも、認知症にみられる臨床症状を専門家が評価することによって重症度を判定することができるという特長を持ちます。また、患者さんの日常生活を把握しているご家族あるいは介護者の方からの詳しい情報をもとに重症度を評価することも可能です。

正常状態を把握する

正常な状態では記憶障害はありません。ただし、軽度の断続的な物忘れが存在することもあります。見当識障害はみられません。見当識障害とは、今がいつ(時間)で、ここがどこか(場所)ということがわからなくなる状態のことです。引っ越しや入院、子供との同居などといった生活環境が変化する時に強く現れるといわれています。日常生活や仕事上の問題は正常に解決することができます。また、金銭管理も良好で、過去の実績と比較しても変わらずに優れた判断力を示します。地域社会の面においては、ボランティア、買い物、社会集団、仕事において、通常レベルで自立して機能することができます。家での生活、趣味、知的関心が十分に保持され、介護を全く必要としない状態です。

軽度認知障害(MCI )への進行

認知症は「進行性の認知機能低下により、日常生活や社会生活に支障をきたす状態」と定義されています。認知症の多くは徐々に認知機能が低下していきます。その過程で、正常とはいえないが認知症とも診断することができない、認知症の一歩手前という状態が存在します。これを軽度認知障害(MCI)といいます。軽度認知障害は「認知機能の低下に関する訴えがきかれ、認知機能は年齢相応より低下するが認知症には到らず、基本的な日常生活には支障がない状態」と定義されています。専門家による調査によって、軽度認知障害から高い確率で認知症に移行することが明らかになっています。正常状態から軽度認知障害(MCI )まで進行すると、軽い物忘れが頻繁に起こるようになります。出来事を部分的に思い出す良性健忘という症状が出始めます。見当識の面においては、時間進行関係に軽度の困難さは生じてきますが、それ以外の障害はありません。問題解決能力や 類似点、相違点の判断力にも軽度の障害が認められるようになります。ボランティア、買い物、社会集団、仕事での活動にも軽度の障害が出始め、家での生活、趣味、知的関心も薄れてきます。まだ、この段階では介護を必要とはしません。

軽度認知症への進行

軽度認知障害(MCI )から軽度認知症まで進行すると、中等度の記憶障害により日常生活に支障が出始めます。特に最近の出来事に対する記憶に障害が生じます。時間進行関係の見当識にも中程度の障害が出てきます。検査をしている場所の見当識は良好ですが、他の場所では地誌的見当識に障害が起きることがあります。問題解決能力や 類似点・相違点の判断力にも中程度の障害が認められるようになります。通常、社会的判断は保持されます。ボランティア、買い物、社会集団、仕事での活動には関わっていても自立して機能できない状態です。簡単な検査では正常と診断されることも多いといわれます。家庭生活の面では、軽度でも確実な障害がみられ、家事は複雑なことはできなくなり、趣味や関心も複雑なものに関してはなくなってきます。この段階では、介護が奨励されます。

中等度認知症への進行

軽度認知症から中等度認知症まで進行すると、重度の記憶障害が生じるようになり、過去に十分学習したことのみを保持し、新しいことは急速に記憶から消失するようになります。時間進行関係に重度の障害を持ち、一般的に時間的見当識障害が現れ、地誌的見当識障害もよく見られるようになります。問題解決能力や 類似点・相違点の判断力にも重度の障害が認められるようになります。多くの場合、社会的判断力も障害されます。家庭外での自立は不可能ですが、自宅外へ連れ出しても第三者の目には活動可能に見えます。家事は非常に簡単なことだけが可能で、物事への関心は限定されたもののみとなります。介護の面では、着衣、衛生管理など身の周りのことに介助が必要となります。

重度認知症への進行

中等度認知症から重度認知症まで進行すると、より重度の記憶障害が生じるようになり、記憶は断片的なものが残っている程度になります。この進行過程に至ると、人物への見当識は保たれるものの、時間や場所への見当識は失われます。また、問題解決能力や判断力も失われ、自宅外へ連れ出して生活することは不可能となります。家庭内でも意味のある生活活動は困難になり、日常生活に対する十分な介護が必要とされ、失禁症状も頻繁に現れるようになります。

認知症の進行を遅らせる薬

アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症における認知症症状の進行を遅らせる「アリセプト」という薬があります。脳内では、たくさんの神経細胞がネットワークで繋がっていて、膨大な情報交換が行われています。その情報交換の場はシナプスと呼ばれ、シナプスでは神経伝達物質を介して情報交換が行われています。神経伝達物質のひとつにアセチルコリンという物質があります。シナプスから放出されたアセチルコリンは、情報を伝達した後に分解酵素「アセチルコリンエステラーゼ」によって速やかに分解され、再び元の神経細胞に取り込まれます。アルツハイマー型認知症の脳ではアセチルコリンの減少がみられるため、情報伝達後にアセチルコリンの分解が抑制されれば脳内におけるアセチルコリン濃度は高まると考えられます。アリセプトは、分解酵素「アセチルコリンエステラーゼ」を阻害することによって認知症症状の進行を遅らせる薬です。ただし、症状の「進行を遅らせる(抑える)薬」であり、認知症そのものを治す薬ではないことに注意しなければいけません。

脳のゴミを捨てることによって認知症を克服することはできるのか?

成人の脳では、日々7gほどのタンパク質のゴミが作られ、適切な排泄が行われないと脳に蓄積し、健康を損なうといわれています。認知症の原因物質ではないかといわれるアミロイドβ(ベータ)も脳で生じるゴミの一種です。通常、これらのゴミはグリンパティックシステムと呼ばれる脳のクリーニングシステムによって処理されていますが、ここに何らかのトラブルが生じるとゴミは脳に蓄積されることになります。「脳に溜まったゴミをいかに捨てるか?」これが認知症を克服するためのカギになると考えられます。

アミロイドβを捨てる仕組み

一般に、人間の体で生じたゴミは腎臓や肝臓で処理され、体外へ排泄されます。その過程では、体中に張り巡らされたリンパ系が様々な組織で生じたゴミを回収し、細い導管→太い導管→血管の順に流れ込み、ゴミを腎臓や肝臓へと運び込むのです。かつて、脳にはリンパ系のようなゴミを回収する仕組みは存在せず、脳で生じたゴミは全て脳内で処理されると考えられていました。しかし、近年の研究によって脳にもゴミを回収する仕組みが備わっていることが発見されました。この仕組みを「グリンパティックシステム」といいます。脳の血管は「血管周囲腔(けっかんしゅういくう)」に囲まれ、両者の間には脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体が流れています。血管周囲腔の外側は「アストロサイト」と呼ばれる支持細胞とつながっています。脳で生じたゴミは脳脊髄液中に排泄され、アストロサイトを通じて静脈内に送られて腎臓や肝臓で処理されることがわかっています。認知症の脳内では、グリンパティックシステムが正常に機能せずにアミロイドβという脳のゴミが蓄積し、記憶が失われていくのではないかといわれています。

グリンパティックシステムと頭蓋仙骨療法

グリンパティックシステムは、近年になって明らかにされた脳のゴミ処理システムです。しかし、この存在は以前より予見され、時折、脳で生じたゴミの排泄ルートである脳脊髄液の流れ方に異変が起きることに気付いた医師がいます。この医師は、脳脊髄液の流れに異常が生じると記憶力・集中力の低下、頭痛、無気力、慢性疲労など様々な現象が起きることを発見し、さらに、外部からの手指刺激を用いた脳脊髄液の流動調整によって、これらの症状が治癒することを見出だしました。この手法は頭蓋仙骨療法(とうがいせんこつりょうほう)と呼ばれ、まさにグリンパティックシステムの正常化を目指す手法と考えられます。グリンパティックシステムの研究には、脳における水の出入り口となる「アクアポリン4」というタンパク質の発見が重要な役割を果たしましたが、アクアポリン4の働きを証明するためには脳内の水の動きを生きたまま可視化する必要がありました。当時は現在のような高度な顕微鏡技術がなかったため、世の中の人にグリンパティックシステムの存在を広く認知されるのは難しかったのかもしれませんが、頭蓋仙骨療法における脳脊髄液の流動システムの考え方は、まさしくグリンパティックシステムそのものです。

認知症対策としての漢方薬アロマタッチの可能性

私たちは、この手法をさらに進化させ、脳に働きかける漢方薬、大きなリラックス効果を生むメディカルアロマシャワー、温泉療法を頭蓋仙骨療法と融合し、様々な角度から脳を活性化させることを目指した「漢方薬アロマタッチ」を開発いたしました。漢方薬、メディカルアロマ、頭蓋仙骨療法、温泉療法をそれぞれ単独で用いるのではなく、全てを同時に行うことに私たちは大きな意義を見出しています。漢方薬アロマタッチでは漢方薬を必要とするため、薬剤師の資格と医薬品の取り扱い許可が必要です。また、メディカルアロマシャワーの実践には美容師の資格と美容所の許可が必要です。私たちは、これら全ての資格と許可を所有し、みなさまに安心してご利用いただける環境を整えています。漢方薬アロマタッチは、既成概念にとらわれず、何とか認知症のお悩みを解決する方法はないかと模索した結果、ようやく辿り着いた手法です。認知症対策のひとつとしてお考えいただければ幸いです。

このページは医薬関係者への情報提供を目的としています。