認知症の定義と漢方薬アロマタッチによる対策

世界保健機関によるICD-10では、認知症の定義は「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能障害からなる症候群」とされています。ICD-10以外にも、米国精神医学会によるDSM-5やNIA-AAなどの認知症の診断基準があります。ここでは、認知症の定義を確認するとともに、認知症と関係が深いといわれる脳のゴミと漢方薬アロマタッチによる対策を検討していきます。

DSM-5による認知症の診断基準

A.1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている:

(1)本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという懸念、および

(2)標準化された神経心理学的検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害

B.毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする)。

C.その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない。

D.その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)。

ICD-10による認知症の診断基準

G1.以下の各項目を示す証拠が存在する。

1)記憶力の低下

新しい事象に関する著しい記憶力の減退。重症の例では過去に学習した情報の想起も障害され、記憶力の低下は客観的に確認されるべきである。

2)認知能力の低下

判断と思考に関する能力の低下や情報処理全般の悪化であり、従来の実行能力水準からの低下を確認する。

1)、2)により、日常生活動作や遂行機能に支障をきたす。

G2.周囲に対する認識(すなわち、意識混濁がないこと)が、基準G1の症例をはっきりと証明するのに十分な期間、保たれていること。せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留。

G3.次の1項目以上を認める。

1)情緒易変性

2)易刺激性

3)無感情

4)社会的行動の粗雑化

G4.基準G1の症状が明らかに6か月以上存在していて確定診断される。

NIA-AAによる認知症の診断基準

1.仕事や日常生活の障害

2.以前の水準より遂行機能が低下

3.せん妄や精神疾患ではない

4.病歴と検査による認知機能障害の存在

1)患者あるいは情報提供者からの病歴

2)精神機能評価あるいは精神心理検査

5.以下の2領域以上の認知機能や行動の障害

a.記銘記憶障害

b.論理的思考、遂行機能、判断力の低下

c.視空間認知障害

d.言語機能障害

e.人格、行動、態度の変化

アルツハイマー型認知症の定義

日本神経学会では、アルツハイマー型認知症を「病理学的に神経原線維変化とアミロイド(大脳皮質、脳血管)の2つの変化を特徴とするアルツハイマー病によって大脳皮質、海馬、前脳底部で神経細胞死、シナプス減少、アセチルコリン低下が起こり、認知症を発症した段階」と定義しています。典型的な症状は、ゆっくりと進むエピソード記憶障害から始まる記憶と学習の障害です。

その後、会話や文字でものごとを表現したり理解したりすること、目的を持って一連の活動を行うこと、顔や物品の認識や物品を見つけること、簡単な道具の操作や洋服を着ることが難しくなり、人格が変化したりすることによって社会的認知機能に障害が出たりするようになります。

レビー小体型認知症の診断基準

DSM-5では、レビー小体型認知症の診断基準を以下のように定めています。

【レビー小体病を伴う認知症の診断】

A.認知症の基準を満たす。

B.その障害は潜行性に発症し緩徐に進行する。

C.その障害は中核的特徴および示唆的特徴の組み合わせによるほぼ確実なレビー小体病を伴う認知症または疑いのあるレビー小体病を伴う認知症の基準を満たす。ほぼ確実なレビー小体病を伴う認知症では、2つの中核的特徴、または1つ以上の中核的特徴と1つの示唆的特徴をもつ。疑いのあるレビー小体病を伴う認知症では、1つの中核的特徴のみ、または1つ以上の示唆的特徴をもつ。

(1)中核的な特徴:

(a)著しく変動する注意および覚醒度を伴う認知の動揺

(b)よく形作られ詳細な、繰り返し出現する幻視

(c)認知機能の低下に引き続いて起こる自然に発生したパーキンソニズム

(2)示唆的な診断的特徴:

(a)レム期睡眠行動異常症の基準を満たす。

(b)重篤な神経遮断薬に対する過敏性

D.その障害は脳血管障害、他の神経変性疾患、物質の作用、または他の精神疾患、神経疾患、全身性疾患ではうまく説明されない。

血管性認知症の定義

血管性認知症(VaD)は、脳血管障害が原因となる認知症と定義されています。米国心臓協会/米国脳卒中協会(AHA/ASA)では、血管性認知障害の診断基準を次のように定めています。

【血管性認知障害の診断基準(案)】

1.認知症の診断は、少なくとも2つ以上の認知領域において認知機能の増悪や検査結果の低下が認められ、その結果、患者の日常生活が損なわれていると判断されることが必要である。

2.認知症の診断は、認知機能検査の結果に基づいて判断される。認知に関する少なくとも4領域(遂行機能、記憶、言語、視空間認知機能)を検査する。

3.患者の日常生活障害は、血管障害の結果生じる運動麻痺や知覚障害とは無関係である。

脳のゴミを適切に排泄することの大切さ

成人の脳では、1日に約7gのタンパク質のゴミが作られています。このゴミは、適切に排泄されないと脳に蓄積し、健康を損なう可能性が高いといわれています。認知症の原因物質として疑われるアミロイドβも脳で生じるゴミの一種です。通常、これらのゴミはグリンパティックシステムと呼ばれる脳のクリーニングシステムによって処理されていますが、ここに何らかのトラブルが生じるとゴミは脳に蓄積されることになります。最新の研究では脳のゴミの蓄積が認知症と深い関わりを持つといわれています。脳のゴミを適切に排泄することは、認知症対策の要になると考えられます。

脳のゴミが捨てられる仕組み

一般に、人間の体で生じたゴミは腎臓や肝臓で処理されて体外へ排泄されます。その過程で、体中に張り巡らされたリンパ系が様々な組織で生じたゴミを回収し、細い導管→太い導管→血管の順に流れ込み、ゴミを腎臓や肝臓へと運び込みます。かつて、脳にはリンパ系のようなゴミを回収する仕組みは存在せず、脳で生じたゴミは全て脳内で処理されると考えられていました。

しかし、近年の研究によって脳にもゴミを回収する仕組みが備わっていることがわかりました。この仕組みを「グリンパティックシステム」といいます。脳の血管は「血管周囲腔(けっかんしゅういくう)」に囲まれています。両者の間には脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体が流れ、血管周囲腔の外側は「アストロサイト」と呼ばれる支持細胞とつながっています。

脳で生じたゴミは脳脊髄液中に排泄され、アストロサイトを通じて静脈内に送られて腎臓や肝臓で処理されることがわかっています。認知症の脳内では、グリンパティックシステムが正常に機能せずにアミロイドβのような脳のゴミが蓄積し、記憶が失われていくのではないかといわれています。

グリンパティックシステムと頭蓋仙骨療法

グリンパティックシステムは、近年になって明らかにされた脳のゴミ処理システムです。しかし、この存在は以前より予見され、手術中に、時折、脳で生じたゴミの排泄ルートである脳脊髄液の流れ方に異変が起きることに気付いた医師がいます。この医師は、脳脊髄液の流れに異常が生じると記憶力・集中力の低下、頭痛、無気力、慢性疲労など様々な現象が起きることを発見し、さらに、外部からの手指刺激を用いた脳脊髄液の流動調整によって、これらの症状が治癒することを見出だしました。

この手法は頭蓋仙骨療法(とうがいせんこつりょうほう)と呼ばれ、まさにグリンパティックシステムの正常化を目指す手法と考えられます。グリンパティックシステムの研究には、脳における水の出入り口となる「アクアポリン4」というタンパク質の発見が重要な役割を果たしましたが、アクアポリン4の働きを証明するためには脳内の水の動きを生きたまま可視化する必要がありました。

当時は現在のような高度な顕微鏡技術がなかったため、世の中の人にグリンパティックシステムの存在を広く認知されるのは難しかったのかもしれませんが、頭蓋仙骨療法における脳脊髄液の流動システムの考え方は、まさしくグリンパティックシステムそのものです。

認知症対策と漢方薬アロマタッチ

私たちは、この手法をさらに進化させ、脳に働きかける漢方薬、大きなリラックス効果を生むメディカルアロマシャワー、温泉療法を頭蓋仙骨療法と融合し、様々な角度から脳を活性化させることを目指した「漢方薬アロマタッチ」を開発いたしました。漢方薬、メディカルアロマ、頭蓋仙骨療法、温泉療法をそれぞれ単独で用いるのではなく、全てを同時に行うことに私たちは大きな意義を見出しています。

漢方薬アロマタッチでは漢方薬を必要とするため、薬剤師の資格と医薬品の取り扱い許可が必要です。また、メディカルアロマシャワーの実践には美容師の資格と美容所の許可が必要です。私たちは、これら全ての資格と許可を所有し、みなさまに安心してご利用いただける環境を整えています。

漢方薬アロマタッチは、既成概念にとらわれず、何とか認知症のお悩みを解決する方法はないかと模索した結果、ようやく辿り着いた手法です。漢方薬アロマタッチが目指すのは快適な日常生活を取り戻すことです。認知症対策への可能性を秘めた手法のひとつとしてお考えいただければ幸いです。

このページは医薬関係者への情報提供を目的としています。