線維筋痛症に漢方薬アロマタッチ

線維筋痛症は、診察や画像検査などの一般的な臨床検査で異常が見つからないにもかかわらず、全身に激しい痛み・こわばりが起きる病気です。日本における線維筋痛症患者の割合は人口の1.7 ~ 2.1%で、中年女性に多く発症するといわれます。
線維筋痛症の症状

痛む範囲は人によって異なり、体の一部分だけのこともあれば、全身が痛む場合もあります。痛みの強さも様々で、仕事を続けられる程度の比較的軽い場合もあれば、末期ガンと同程度の激痛に襲われるような重度レベルのこともあります。日によって痛む部分が移動したり、天候が痛みの強さを左右することもあります。また、睡眠の悩みを抱える人は多く、線維筋痛症を患う人の約9割に睡眠障害が見られるといいます。同じ姿勢で寝ていると、自分の体重によって痛みが生じ、途中で目が覚めてしまうという特徴があります。そして、熟睡できないことが更なる痛みを引き起こし、また眠れなくなるという悪循環に陥ります。さらに、疲労を感じる割合もかなり高いといわれます。これと同様の症状を示す疾患に慢性疲労症候群があります。起床時から激しい疲労感に襲われ、それが1日中続くのです。この疲労は、身体活動や精神的ストレスによって悪化します。
線維筋痛症の診断

線維筋痛症診療ガイドライン2017には、線維筋痛症の臨床基準あるいは分類・診断基準は,いずれも欧米で作成されたものを日本語に訳し,日本人に適応させているもののみであり,日本人を対象として作成されたものはない。また,線維筋痛症の病因・病態に不明な部分が多く,客観的なバイオマーカーがないのが現状であり,これまで作成された基準はほとんどが精神疾患・障害と同様に臨床症状の組み合わせによる操作的基準である。
と記載されています。1990年に提唱されたACR分類基準(classification criteria)は、器質的疾患や基礎疾患を認めない3カ月以上続く全身の疼痛と、左右対称性の18カ所の圧痛点のうち11カ所以上の存在を求めていましたが、この基準は2010年に改訂され、新たに診断予備基準(preliminary diagnostic criteria)が提唱されました。新基準の特徴は、旧基準にあった圧痛点の存在を求めず、患者の自覚的な広範囲疼痛(widespread pain)19カ所の他に疲労感(fatigue)、睡眠障害(waking unrefreshness)や認知障害(cognitive disorder)の3つの症状、全身症状(general symptoms)として頭痛、過敏性腸症候群、めまい・耳鳴、排尿障害などの自覚的な症状を症候重症度symptom severity(SS)でスコア化していることです。
3カ月以上持続する全身の疼痛
器質的疾患が認められないこと
18のうち11以上の圧痛点
(いずれも左右対称性)
1.Low cervical(下部頚部位)
2.Trapezius(僧帽筋部位)
3.Supraspinatus(棘上筋部位)
4.Second rib(第2肋骨部位)
5.Lateral epicondyle(上腕骨内顆)
6.Gluteal(臀筋部位)
7.Greater trochanter(大転子部位)
8.Knee(膝関節部位)
9.Occiput(後頭部位)
次の3つの条件が当てはまれば、線維筋痛症の診断基準を満たす。
1)広範囲疼痛の指標(widespread pain index:WPI)が7カ所以上当てはまり、症候重症度(symptom severity:SS)スコアが5以上となった場合、あるいは、WPIが3~6カ所でSSスコアが9以上となった場合。
2)これらの症状が少なくとも3カ月以上続いていること。
3)疼痛を説明するほかの疾患がないこと。
広範囲疼痛の指標(widespread pain index:WPI)
患者が過去1週間以上にわたり、全身19カ所のうち痛みが続いている部位を記入し、それが何カ所あるかを記入する。
スコアは、0~19の値となる。
症候重症度(symptom severity:SS)スコア
疲労感、起床時のスッキリしない感じ、認知症状の3つについて、過去1週間の重症度レベルを次の尺度で評価する。
0=問題なし
1=やや問題あり、ゆるやかで一時的な程度
2=かなり問題あり、しばしば現れ、中くらいの程度
3=ひどい、広範囲で持続的で、生活上の問題が生じている
次に、一般的な身体症状の程度を次の尺度で評価。
0=症状なし
1=2~3の症状あり
2=中等度の症状あり
3=多数の症状あり
SSスコアは、上記3症状(疲労感、起床時にスッキリしない感じ、認知症状)の重症度のスコアと、一般的な身体症状の程度(重症度)を合計する。結果的には0~12のスコアとなる。
線維筋痛症の原因
現在のところ、線維筋痛症の原因はわかっていませんが、外傷、出産、ワクチン接種、膠原病、リウマチ性疾患といった身体的ストレスや、抑うつ気分、双極性障害、不眠、不安などの心理社会的・心的ストレス、あるいは遺伝的要因などの可能性が報告されています。
線維筋痛症に漢方薬アロマタッチ

漢⽅における疼痛の基本認識は「通則不痛、不通即痛(通じれば即ち痛まず、通じざれば即ち痛む)」とされています。つまり、通常はスムーズに流れている体内環境に乱れが生じ、体のどこかが詰まってしまった時に痛みが発生するという考えです。確かに、心臓の血管が詰まる心筋梗塞では激しい痛みが生じます。漢方には、気血水という概念があります。気は体を活動させるエネルギー、血は体の物質的基礎となる液体、水は体を潤す液体とされています。気の流れが滞ると移動性で張ったような感じの痛みが生じます。血の滞りは刺すような痛みを引き起こし、夜中に痛みが強くなるという特徴を持ちます。水が滞ったときには患部が腫れ、雨が降ると痛みが悪化します。この他に、体の冷えや熱の状態も深く関わってきます。このような痛みのルーツをひとつひとつ丁寧に辿りながら、体の流れを整えるために必要な漢方薬をお選びします。
同時に、植物エッセンスである精油をメディカルアロマシャワーとして使用します。精油の香り分子は嗅覚受容体に結合し、電気信号として瞬時に脳へと伝わります。脳内の神経ネットワークは複雑に張り巡らされているため、仮に一部の回路に障害があっても、香り分子の情報は別の回路を辿って正常に伝達されるといわれます。そして、精油の吸収には皮膚を介する経路も存在します。鼻と皮膚から同時に吸収された精油は、組織の損傷によって生成される生理活性物質の抑制やオピオイド受容体への働きかけによって鎮痛作用を示すという報告があります。これを実践するのがメディカルアロマシャワーです。
また、脳では1日あたり約7gのゴミが生じるといわれますが、脳脊髄液という液体がこれをクリーニングしています。この仕組みはグリンパティックシステムと呼ばれますが、このシステムに狂いが生じると体のあちこちに支障が出るといわれます。これを改善するために、ひとりのアメリカ人医師が開発したのが頭蓋仙骨療法です。この手法によって線維筋痛症をはじめとして様々な病に苦しむ人々が救われたといいます。また、痛みの緩和やリウマチなどの神経系疾患に効果があるといわれる鳥取県の三朝温泉・秋田県の玉川温泉にも注目いたしました。私たちが行っているメディカルアロマ頭部浴・脚部浴は、漢方、精油、温泉といった自然の力とグリンパティックシステムの正常化を図る頭蓋仙骨療法を融合したものです。ひとつの方法では解決が難しい病は沢山あります。私たちは多面的なアプローチによって、様々なお悩みが解決されることを目指しています。つらい痛みから解放され、快適な日々を過ごせるようになる方が一人でも多くなることをお祈りいたします。
薬剤師・美容師の資格を所有しています。幼少時より自然食品を中心とした生活を送る中で食事の大切さを学び、その後、漢方薬を学びました。日々、苦痛が少なく効果が大きい健康法の開拓に努めています。