認知症の原因とストレスの測定 / 漢方薬アロマタッチによる対策

認知症の介護に関連するストレス研究では、その家族や介護職員のストレスが社会問題となり、数多くの研究が行われています。それに比べて、本人のストレスに関して行われている研究は、かなり少ないといわれます。この原因のひとつは、認知症を患う人のストレス測定法が確立されていないためと考えられています。ここでは、現在の認知症に対するストレス測定法と、ストレス対処法としての漢方薬アロマタッチの役割について考え、さらに認知症の原因を探求します。

認知症のストレス測定の難しさ

認知症では、記憶障害、見当識障害、理解・判断力に関する障害、実行力障害などといった中核症状を生じます。このような症状から、健康な人を対象としたストレス測定法をそのまま認知症の人に行うことは難しいと考えられます。認知症の人を対象としたストレス測定にとって最も大きな障害となるのは、ストレスの自覚症状を言葉で正確に表現できるかどうかという点です。また、ストレスの指標として使用されているものには身体的拘束感を伴うものが数多くあり、認知症の人がこのような指標に対応するのは極めて困難で、認知症において正確なストレス測定を行うのは難しいと考えられます。

ストレス測定の壁となる認知的評価の誤り

現在行われているストレス指標には、ストレス状態を正確に言葉で伝えるものが数多く含まれます。認知症の人を対象としたストレス測定での大きな壁は、ストレスの自覚症状を正確な言葉で相手に伝えなければならない点にあります。ストレスを正確に測定するためには「ストレスの自覚」と「正確な言語化」を分けて捉える必要があります。人は周囲から刺激を受けたとき、それがストレスとなるかどうかを判断(認知的評価)した後にストレス反応が起こります。したがって、ストレス反応が同レベルでも、そのときの認知評価次第でストレス測定の結果が異なります。認知症の場合、認知症に伴う中核症状によって不適切な認知的評価が行われている可能性があります。不適切な認知的評価には、自らにとって有害なストレスの原因を無害であると評価する場合と、反対に、無害な環境刺激を有害であると評価する場合があります。有害なストレスの原因に直面した場合、健康な人ならストレスの原因に対する適切な認知的評価を行い、その結果として引き起こされるストレス反応や情動反応は正当なものであると判断することができます。しかし、認知症の人の場合は、本当は有害なストレスの原因を誤って無害であると評価してしまい、適切な対処ができていないという可能性も考えられます。反対に、本当は無害であるはずの刺激を有害であると評価してしまうことによって、不必要なストレス反応やネガティブな感情が生じてしまうこともあります。認知症の周辺症状とされる暴力的行動や不安などの心理的・行動的反応には、こうした不適切な認知的評価が関与していると考える専門家もいます。不適切な認知的評価は、自分がストレスフルな状態にあることを自覚しにくくします。この現象を認知症の人が正確に言葉で伝えることは、非常に難しいのではないかと推測されます。失認や失語などの中核症状が顕著である場合には、ストレスに関する自覚症状を的確な言葉で表現するのは一層難しくなります。また、自覚症状を言葉にすることに抵抗を示す可能性も予測されます。