アルツハイマー型認知症の予防は可能?物忘れの秘策「漢方薬アロマタッチ」とは…
アルツハイマー型認知症では、エピソード記憶が著しく低下するといわれます。エピソード記憶とは個人的に経験した出来事に関する記憶のことで、例えば、昨日の夕食をどこで誰と何を食べたかというような記憶です。エピソード記憶の形成において中心的な役割を担うのが脳の「海馬」という部分ですが、その記憶をスタートさせるのが「アセチルコリン」という物質です。海馬内のアセチルコリンは、記憶を形成する過程で分泌量が増加し、その後も高い濃度が維持されることがわかっています。アセチルコリンは、アルツハイマー型認知症では海馬内での減少が顕著であることが知られているため、アセチルコリン濃度を上げることがアルツハイマー型認知症の予防につながると考えられます。
アセチルコリン濃度が上昇?!漢方薬アロマタッチの神経作用
私たちは、漢方薬、メディカルアロマ、頭蓋仙骨療法を融合した漢方薬アロマタッチという手法により、物忘れの予防と改善を目指していますが、注目したいのがアセチルコリンと漢方薬アロマタッチとの関係です。アセチルコリンは、記憶以外でも様々な働きを持つ物質です。例えば心臓への働きかけです。アセチルコリンが心臓に作用すると、心臓はリラックスモードに入り、心拍数が低下します。そこで、漢方薬アロマタッチ前後における5名の心拍数の変化を検証してみました。その変化は、73 →65、95 →82、78 →70、84 →83、75 →68という結果となり、いずれも心拍数は低下しました。また、眼圧を下げる作用もあり、緑内障の治療薬にはアセチルコリン濃度を保つ薬が使用されます。この点に関しても漢方薬アロマタッチとの共通点が見られます。かつて、複数の病院で緑内障と診断され、近々手術する予定だったはずが、手術の順番待ちをしている間に漢方薬アロマタッチを行ったところ、眼圧が下がったために手術の必要性がなくなったという方がいるのです。さらに、漢方薬アロマタッチが終わると空腹感を感じるという感想を多くいただきますが、アセチルコリンには腸の蠕動運動を活性化し、空腹感をもたらす働きもあります。このような結果から、漢方薬アロマタッチとアセチルコリンには深い関係があることが推測されます。
漢方薬アロマタッチで物忘れが治る?!
実際、私たちは「物忘れが治る」という経験もしています。その中で、最も重症だった例をご紹介いたします。大学病院で重度認知症の診断を受け、時間や場所への見当識が失われ、自分が今どこにいるのかもわからない状態です。また、顔の表情も乏しく、笑顔は一切ありません。片手が硬直し、自立歩行も不可能で、初日は両脇から2人に支えられて来ました。そこで、3日間連続で漢方薬アロマタッチを行ったところ、自立歩行が可能になりました。その後、1週間に1度のペースで継続すると3ヶ月後には物忘れもなくなり、笑顔で日常会話ができる程度にまで回復しました。半年後には硬直していた腕を自由に動かすことが可能になり、さらにその半年後にはパソコンの打ち方を習得し、パソコンを使って手紙が書けるまでの回復を示しました。
物忘れの自覚がない時の対策
また、本人が物忘れを自覚していない場合もあります。ご家族が治療を希望しても本人はその必要性を全く感じないため、治療を前に進めることが困難になります。この場合、まずは治療をスタートさせることが大切です。漢方薬アロマタッチを行うためには、薬剤師の資格や医薬品の取り扱い許可だけではなく、美容室の許可も必要となります。そのため、私たちは美容師免許を所持し、漢方薬アロマタッチとともにカット、ヘアカラー、パーマなども行っています。そこで、本人が物忘れを自覚しないときに、ご家族が「今日は髪を切りに行きましょう」「今日は白髪を染めに行きましょう」と誘って連れてきた、ということもありました。髪を切ったり、白髪を染めに来たりすることには抵抗を示さないようです。また、足に痛みを抱えている人にはレッグアロマタッチで足の機能を改善するという手法もあるため、これを上手に活かすという考え方も可能です。このように、物忘れ以外にも様々なストレスを同時に解決できるのも漢方薬アロマタッチの特長のひとつです。この他にも、同じ質問を何度も繰り返すという状態や日常生活レベルの計算ができなくなってしまった状態から、漢方薬アロマタッチを行う毎に回復していく様子も目にしています。
物忘れの予防に漢方薬アロマタッチ
物忘れは、初期症状が出る前に予防することも大切なことだと私たちは考えます。最近では、物忘れには生活習慣が大きく関わっているといわれ、規則正しい食生活やストレスを溜めない日常生活を送ることは物忘れの予防に有効であることが認められてきています。これに加えて、私たちは本格的な物忘れ予防の手法として、定期的な漢方薬アロマタッチのご利用をおすすめいたします。病気を治すだけではなく、脳の疲れを取除くことも漢方薬アロマタッチの目標のひとつです。仕事や日常生活における脳の疲れは、簡単に取り切れるものではありません。脳血流を改善する漢方薬、気持ちを落ち着かせる漢方薬など、その時々の体調に合わせた漢方薬をお選びし、リラックス効果・抗ストレス作用の高いメディカルアロマなどを使用します。そして、脳脊髄液の流れを整えることを目標とする頭蓋仙骨療法を頭部浴という形で導入し、様々な角度から脳へのアプローチを行います。漢方薬アロマタッチが終わった後の感想として「頭がスッキリして軽くなる」と表現されることが非常に多くあります。この現象は、疲労していた脳に十分なエネルギーが与えられ、脳にゆとりが生まれたためだと考えられます。脳内では神経細胞の巨大なネットワークが形成され、膨大な量の情報のやり取りが行われています。この情報伝達がスムーズに行われないと物忘れにも大きな影響を及ぼします。こう考えると、脳にゆとりを与えることは、情報伝達のエラーを減らし、物忘れを予防するために非常に有効な手段ではないでしょうか?
食べ物によるアルツハイマー型認知症の予防
アルツハイマー型認知症には食生活も関係しているという報告があります。そこで、アルツハイマー型認知症の予防に有効といわれる食べ物の研究報告をご紹介いたします。
アルツハイマー型認知症患者は魚を食べない?
魚を多く食べている高齢者は加齢や認知症による認知機能の低下が遅延するという報告があります。魚介類にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)というオメガ3脂肪酸に分類される必須脂肪酸が多く含まれていますが、アルツハイマー型認知症患者の海馬や血漿中では、DHAの量が低下しているといわれます。そこで、アルツハイマー型認知症に対するDHAの予防効果を検証した例をご紹介いたします。
ラットで検証!DHA・EPAの予防効果
DHAは細胞膜を構成する脂肪酸で、記憶や学習機能を司る海馬や大脳皮質に多く含まれています。今回の実験では、ラットにDHAを摂取させ、空間認知機能との関係にどのような影響を及ぼすのかを検証しました。すると、海馬と大脳皮質のDHA量の増加と共に空間認知機能が向上していくことがわかりました。その理由としては、DHAによって脳内における抗酸化作用が高まったこと、神経細胞同士の接合部であるシナプス膜の流動性が亢進したことなどが考えられます。さらに、アミロイドβを脳室内に投与することによってアルツハイマー型認知症を発症したモデルラットを用い、DHA・EPAのアルツハイマー型認知症に対する予防効果を検証しました。予めDHA・EPAを投与しておくと、アミロイドβの脳内沈着によって誘発される空間認知機能障害と脳内での酸化・アポトーシス促進が軽減されることがわかりました。すなわち、DHA・EPAを摂取することにより、アルツハイマー型認知症によって失われる空間認知機能や細胞の酸化・アポトーシスが予防できる可能性があると考えることができるのです。
DHAがアミロイドβをやっつける
アルツハイマー型認知症脳には、老人班と呼ばれるアミロイドβ凝集体の特徴的な沈着が見られます。アミロイドβは、アルツハイマー型認知症発症の主要な原因タンパク質のひとつであるといわれていますが、DHAはアミロイドβ凝集体の中でも神経毒性作用が最も強いといわれるアミロイドβオリゴマーの生成を抑制し、凝集したアミロイドβを解離することも明らかになりました。また、島根県の65歳以上の在宅健常高齢者を対象とした4年間のコホート研究を行ったところ、魚を多く摂取する高齢者ほど加齢に伴う認知機能の低下が遅延する可能性を見出したといいます。
コーヒーでアルツハイマー予防
コーヒー豆に含まれているカフェオイルキナ酸は抗酸化、抗腫瘍、抗高血糖、抗炎症などの作用を持つことが知られています。コーヒー豆の他にも、サツマイモ、プロポリス、野菜などに多く含まれています。アルツハイマー型認知症ではアミロイドβというタンパク質が神経細胞に沈着し、神経細胞に傷害をきたします。そこで、ヒト神経芽細胞腫を用いてアミロイドβによって誘発される神経細胞傷害に対するカフェオイルキナ酸の効果を調べたところ、カフェオイルキナ酸が神経細胞を保護する作用を有することがわかりました。さらに、カフェオイルキナ酸の処理が神経細胞の解糖系酵素の発現を増加させ、細胞内のATP産生を促進することが明らかになりました。すなわち、カフェオイルキナ酸は神経細胞保護作用を有し、これは神経細胞のエネルギー代謝促進によるものであることが推測されます。
次に、老化促進モデルマウスを用いて、アルツハイマー症の特徴である学習・記憶能力低下に対するカフェオイルキナ酸の効果を調べました。老化促進モデルマウスは早期からアミロイドβが脳内に増加・沈着し、学習・記憶障害をひき起こすことが知られています。学習・記憶障害抑制および改善効果をモリス水迷路実験で調べたところ、非投与群と比べてカフェオイルキナ酸を30日間経口投与した老化促進モデルマウスにおいて著しい学習・記憶障害の改善効果が見られました。モリス水迷路実験とは空間学習-記憶を評価する検査で、水を張ったプールでマウスを泳がせ、プラットホームに到達する時間を測定するものです。プラットホームはマウスからは見えず、マウスは周りの景色を頼りにプラットホームを探索します。さらに、モリス水迷路実験後の老化促進モデルマウスの脳を調べたところ、非投与群と比べてカフェオイルキナ酸を経口投与した老化促進モデルマウス群において解糖系酵素の遺伝子発現が著しく増加していました。これらの事実は、カフェオイルキナ酸投与によってマウスの脳の解糖系酵素が活性化され、神経細胞の保護を誘導し、その後、学習・記憶に深く関与する長期増強の形成障害を抑制することによって、老化による学習・記憶障害が改善されたことを示すものと考えられます。しかし、アルツハイマー型認知症における学習・記憶障害にはNMDA型グルタミン酸受容体チャネルも深く関与しており、今後、神経細胞や脳の海馬を対象にカフェオイルキナ酸の過度なグルタミン酸による神経細胞保護作用を確認する必要があります。さらに、カフェオイルキナ酸のNMDA型グルタミン酸受容体に対する作用やシナプス可塑性障害に対する作用を明らかにすることが求められます。
アルミニウムはアルツハイマー型認知症の原因物質?
アルツハイマー型認知症脳では、老人斑と神経原線維変化の2つの病理学的特徴が認められますが、神経原線維変化の主要構成成分である異常なタウ蛋白の蓄積は認知症の症状進展に強く関与しており、20歳以下の若年者でも25%、30代では90%以上で軽度の異常なタウ蛋白の凝集が始まっていることが知られています。そして、この異常なタウ蛋白の凝集にアルミニウムが深く関係しているという研究報告があります。アルミニウムは、医薬品や化粧品、食品添加物、乳児に与える粉ミルクなどにも含まれており、認知症の原因として疑われている物質のひとつです。アルミニウムの脳内注入によって、アルツハイマー型認知症で現れる神経原線維変化とよく似た細胞内封入体が確認されるなど、認知症とアルミニウムとの関連については多くの研究報告がされています。しかし、アルミニウムの環境因子としての影響を明らかにするためには、脳内へのアルミニウムの直接投与による実験系ではなく、経口による少量長期投与を行うことが適切であると考える人もいます。そこで、加齢に伴って異常なタウ蛋白の蓄積が起こる遺伝子改変マウスに、少量のアルミニウムを長期経口投与することによって、アルミニウムのタウ蛋白蓄積への影響と神経毒性の有無の検討をしたという研究報告をご紹介いたします。
アルミニウムがタウ蛋白を増加させる
この実験では、まず、加齢に伴って脳の神経細胞内にタウ蛋白が現れてくる遺伝子改変マウスに、アルミニウムを1年間ゆっくりと口から摂取させるさせることによって、脳内のタウ蛋白の変化を観察しました。すると、アルミニウムを摂取した遺伝子改変マウスの脊髄内タウ蛋白凝集体の数は2倍に増加し、海馬と大脳皮質では9ヵ月目で出現し始め、その後も増加し続けました。次に、タウ蛋白凝集がみられる大脳皮質や海馬においてアルミニウムの摂取が細胞死に影響を与えているのかどうかを確認したところ、他のマウスに比べてアルミニウムを摂取した遺伝子改変マウスの細胞死が増加していることが明らかになりました。最後に、アルミニウムの摂取が運動機能に与える影響を検討するため、遺伝子改変マウスで認める異常引きつり運動を月々に測定したところ、どの月においてもアルミニウムを摂取した遺伝子改変マウスに最も重度の高い運動障害が認められました。
アルミニウムの摂取を控えることがアルツハイマー型認知症の予防につながる
今回の結果から、タウ蛋白凝集がみられる状態では、慢性的にアルミニウムを口から摂取することによってタウ蛋白の異常凝集と蓄積が促進され、細胞死や神経障害が引き起こされることが明らかになりました。アルミニウムは医薬品や化粧品、食品添加物、乳児に与える粉ミルクなどにも含まれており、私たちが胎児の頃から常に摂取している金属元素であることや軽度のタウ蛋白凝集は10代の若年者から始まっていることを考え合わせると、アルミニウムの慢性的な摂取はアルツハイマー型認知症を発症させる危険性をはらんでいる可能性が示唆され、アルミニウムの摂取を控えることがアルツハイマー型認知症発症の予防につながると考えられます。
このページは医薬関係者への情報提供を目的としています。
薬剤師・美容師の資格を所有しています。幼少時より自然食品を中心とした生活を送る中で食事の大切さを学び、その後、漢方薬を学びました。日々、苦痛が少なく効果が大きい健康法の開拓に努めています。